人間の運動を数値化して、負荷を調整することでトレーニングの質を高めることができます。
@[toc]
トレーニング時に出した出力(パワー)を、コンディションによる影響を補正して算出したパワーがNP(Normalized Power)です。
自転車のライドでは、向かい風・追い風、坂道などの勾配などで同じライドでも必要なパワーは常に変化していきます。これらの環境による影響を平均化することで適切な平均パワーを算出します。
ローラー台トレーニングの場合、風による影響などがないため平均パワーがほぼほぼNPになります。
NPの計測には、精度の高い計測装着が必要で、自転車ではパワーメーターか、パワー計測機能付きのローラー台が必要となります。
IF(IntensityFactorR)は、個人にとってその運動がどれくらいの強度なのかを決める定数です。通常、IF値は0.75から1.15の範囲になり、0.75が最も負荷が軽く、1.15が最も負荷が重いとなります。
IF値はライダーの能力によって異なりますが、FTPライド(1時間走り続けて最後にピッタリ体力の限界となるパワー配分で走った時の平均値)を行った場合が1.0となることが多く、それよりも楽か辛いかでIF値が出ると覚えておいても良いでしょう。
行ったトレーニングによって身体にかかった負荷を数値化したものがTSS(Training Stress Score)です。TSSは標準化パワー(NP)と強度係数(IF)、そして運動時間によって算出されます。
TSSのスコア基準は、
となっています。
TSSは一回のトレーニングでも使いますが、1週間、1ヶ月などのある程度のクールで算出して、トレーニングサイクルを組み立てるのにも使います。
CTLは、長期間で積み重ねた練習効果を数値化したもので、42日間(6週間)のTSSの平均値で算出されます。
TSSの平均なので、毎日100TSSのトレーニングを行えばCTLは100、二日に1回100TSSのトレーニングを行えば50CTLということになります。
まず大事になるのが、自分の体の状態の把握です。人間は「調子が良い」「身体がだるい」など、体感でも状態をある程度把握できますが、その時の気分やテンションなどで、錯覚を起こすことがよくあります。
TSSを使うことで、現在の身体の状態を適切に把握して、身体の状態に合わせたトレーニングを選ぶことで、オーバートレーニングを防ぐことができます。
TSSはNPとIFから算出されるので、NPを算出するために必須のパワーメーターが必須となってしまいますが、スマートトレーナーならパワー計測機能が搭載されているので、パワーメーターは不要です。
どちらもない場合は、Tacx Training Appなどのインドアトレーニングアプリを使えば、スピードセンサーから仮想パワーを算出してTSSを出してくれます。
TSSやCTLが、短期・長期間でのトレーニングの負荷を決める数値です。この数値をどこに持っていくかで、トレーニングの質が決まります。
TSSやCTLを使ってトレーニングをするのであれば、まずは1週間から1ヶ月ほど、自分の標準的なトレーニングでTSSやCTLがどれくらいなのかを計測してみましょう。
計測ができたら、そこから数値を少しずつ上げていくようにします。目安としてはTSSで5〜10、CTLで3〜5程度にすると良いと言われます。
いきなりTSSをグッとあげたトレーニングをすると、オーバートレーニングになって、最終的にCTLが下がってきてしまうので意味がありません。この辺りのバランスを上手にとってトレーニングをしましょう。
トレーニングおいて数値化することは、トレーニングの質を高めることができますが、TSSやCTLが絶対というわけではありません。あくまで指標です。
トレーニングは何かの目標のためのものでもありますが、トレーニング自体が楽しめないと継続ができません。指標に縛られてしまうと、成果が伸びずモチベーションが下がってしまうこともあります。
例えば、ダイエット程度であれば、敢えてTSSやCTLに拘らず「毎日1時間ローラー台で走ろう」とか、「週に1回はローラー台で全力走をしよう」などの軽いルーティンで良いでしょう。
そこから「もっと速くなりたい」「もっと遠くまで走れるようになりたい」と思ったら、数値を使ってトレーニングを管理し始めると良いでしょう。